第2章 1.タイの将来性


 現在、タイに居住する日本人は4万人以上、タイに進出している日系企業数は2,500〜3,500社に上ると言われる。

 東南アジア諸国の中で、タイは生産拠点、輸出拠点として注目を集めている。筆頭は自動車関連企業だ。東南アジア域内での関税が撤廃されるAFTA発効を見越し、同域内に拠点を1ヵ所作ろうと考える企業が、政情不安のあるインドネシアやフィリピンからタイに拠点を集約しつつある。

 その理由としては、タイがどの条件に関しても平均して良い点をとっていることが挙げられる。タイが唯一最高点を挙げているのは、日本人としての生活のしやすさや政情の安定だ。それ以外の点、例えば人件費、労働条件やインフラなどは必ずしも満点とはいえない。しかし、1点や2点しか取れない項目もない。

 平均して無難な点を取れる国として消去法で選ばれているというのが正直なところなのではないだろうか。

 一方で中国の台頭を考えると安心してもいられないというのが実情だ。人件費、労働条件、インフラなどの条件が中国とタイは似通っており、安穏としてはいられないはずにもかかわらず、タイ人特有ののんびりさ加減などから危機感は不足しているように感じる。

 現在は、中国とタイを計りにかけた結果、中国の政情の不安定さ、突然の政策変更の可能性などを考慮しタイを選ぶ企業も多い。だが、中国の持つ将来的な可能性を考えて、本格的に外資誘致政策などを再検討すべき時にさしかかっている。