28.年齢と歯



 最近、「年をとれば歯がなくなっていくので、、、、、」ということをたくさんの患者さんからお聞きしました。理屈っぽい久米は、こんな論理性のない話をされるとどうしても、「どうして年をとると歯がなくなるんですか?」と聞いてしまいます。

 命題:「年をとる」→「歯がなくなる。」を否定するには「高齢者でも全部の歯を健康な状態で持っている人がいる。」 の例を示せれば十分ですから、沖縄にいたときに90歳代で元気に歩いて来院され、ほとんどの歯が健康だった人をたくさん見ていましたので、そのときの話しています。

 歯を失うからにはそれなりの理由があります。年をとるというだけの理由で歯が失われる理由にはなりません。 しかし年齢と歯の残像数を疫学的に調べると40歳で25本、50歳で22本、60歳になるとガクンとおちて13本、70歳で8本という結果でした。 年をとることが歯を失う理由でないとしても、年齢とともに歯の数は少なくなっています。

  歯科の問題は大きく分けて2つあります。一つは虫歯。そしてもう一つが歯周病です。虫歯で歯を失うとするとよっぽどほったらかしにしたような歯でないと、虫歯を理由に抜かれることはありません。歯を失う理由の大半は歯周病です。

 歯周病は歯茎と歯槽骨といった歯を支えるところの病気ですから、歯周病になってしまうと虫歯になったことのないようなキレイな歯でもその支えを失って抜けてしまいます。ですから年をとると歯がなくなるなんて考えている患者さんには、「年はとっても大丈夫!歯周病にしなければ。」と歯周病予防をお勧めするのですが。あらためて、年齢と残存歯数のグラフをみると50歳から60歳で歯をうしなっているのが気にかかります。 まるで「50代はお肌ならず歯の曲がり角」と訴えているかのようです。

 歯が抜けるまでにはそれを支える骨が失われているのですから、その変化は10年以上前からおこっているはずです。ということで、少なくとも40代ぐらいから(早いにこしたことはありません。)歯槽骨を意識した歯周病予防を真剣にとりくむべきでしょう。
 
 目は年をとれば水晶体が弾力を失って老眼になりますが、歯にはこんな"老化"はありません。予防可能です。もし老眼も予防可能であるなら、どんな労力を使っても予防したいと思います。

 残念ながら久米は老眼が始まって、これを食い止める方法をやっきになって探しています。しかし友人の医者から「老化現象だから、、、」と私の予防しようという意欲がむなしいものだと諭します。 目に比べれば歯はずっと幸いです。 予防できるんですから。目のほうはせいぜい "規則正しい生活をして、栄養に気をつけて、全身状態を健康に保つ。" なんて根本的なところを気をつけるしかなさそうです。 

 歯周病のほうも、全身の健康がおおいに関係します。たとえば骨粗鬆症だと歯周病にははなはだ不利です。糖尿病の人は歯周病のコントロールは大変です。 逆に歯周病が全身状態へ関わります。 それ以上に生活パターンやQOLにも関わりそうです。

 インターネットでおもしろいグラフを見つけました。歯の数とご老人の生活パターンです。 歯の数が少ないほど家に篭りがち。反対にたくさんあるほど、元気にどこにでも出かける。とはっきりと読み取れます。沖縄にいたときにお会いした、3階にある私の歯科医院にまで階段を上ってこられたたくさんのお年寄りの姿が忘れられません。ボケたところもなく、話もしっかりしていて、ほとんど抜けた歯がなく、「沖縄料理はおいしいっさねー!」と笑っておられた姿です。内地のご老人よりはるかに幸せそうに映りました。ただ単に平均寿命が長いというだけでなく、老人になってからのQOL(生活の質)が高いように思えました。

 それから、残存歯数とボケも関係があるとのことです。歯周病で歯を失い、食べ物はおいしくなくなり、頭もボケてしまい、家に閉じこもるような人生とすべての歯が残っていて、何でもおいしく噛めて、ボケとは無縁で、いろいろなところに出かけていろいろな人に会って、大きな口を開けて健康的な笑いでできる人生では大きな差があります。 その鍵を歯周病が持っています。 歯周病は始まっていても気が付きません。少なくとも40代で真剣に取り組んでください。

 この文章を書くのにHPをいろいろ見ながら書いたのですが、NHKのガッテン書庫"健康な歯が抜け落ちる。歯周病予防術"、"歯の長生き"も読みました。素晴らしい内容でしたが、"無断転載を禁じます"とあったので、残念ながら内容は転載しませんでした。皆さんでHPをご覧になってください。非常にわかりやすい内容です。