13.妊娠前にしておきたいこと


 妊娠前にしておきたいこと 「妊娠期間中の.歯科治療は安定期に!」というように書かれている本もあるようですが、妊娠中の歯科治療はなるべく避けたいものです。だって、レントゲンを撮られるだけでも問題ありと思われるでしょう。麻酔や抗生物質も同様ですね。妊娠中の歯科治療はなるべく避けたほうがいいとなると、"妊娠前にしておきたいこと"は向こう1年間歯医者に行かなくてすむようにすることです。だから赤ちゃんが欲しくなったら"歯医者でチェック"です。そして歯医者に「これから赤ちゃんを作る計画があるのですが、歯科の問題としてはどんなことがありますか?」と相談されてください。あまりに歯のほうで問題ありとなれば、「その治療が終わってからのほうがいいですよ。」とアドバイスされるかもしれません。

 問題になりそうなことは@虫歯、A歯周病、B親知らずです。@虫歯ですが、ちいさな虫歯は1年ほどで大きな問題になることはありません。神経に近いところまで来ているような虫歯は最優先です。妊娠中に激しい痛みを訴えて来られる場合のほとんどは、神経にまで達した虫歯です。冷たいものがしみるのは当然でなんの刺激もなしにズキズキと激しい痛みがあるので、場合によっては妊娠の問題異常に痛みのほうをなんとかして欲しいと訴えられることもあります。 

 こんな症状が妊娠初期にあればたいへんな問題です。痛みを止めないわけにいかない。レントゲンも撮らないで神経をとるような処置がされると思います。妊娠初期はお腹の中の赤ちゃんが活発に細胞分裂しています。変な刺激を与えて奇形を作りやすいのもこの時期です。歯医者もできる限り奇形を作るような危険のあることはさけて対処してくれるでしょうが、麻酔の注射は必要です。どうしてもある程度の刺激を与えてしまうようなことは避けられません。 こんなことのないように妊娠前に処置しておきたいものです。妊娠時期に限らず、浅いうちにかかれば神経をとらずに処置が終わります。通う回数も費用も歯のダメージも比べ物にならないほど軽微です。Aの歯周病ですが、妊娠される年齢は20代前半から30代まででしょう。   

 20代前半だと、少々歯磨きに問題があろうと骨にダメージがあるような歯周病は少ないものです。また歯周病は慢性的なものが大半ですから、妊娠中にどうしても処置しなければならないというものはあまり多くありません。その数少ない症例ですが、一つは急性の歯肉炎です。歯茎が赤く腫れて少しでもさわると痛いといった症状です。こんな場合でも歯の清掃に努めれべすぐによくなりますので、大きな問題にはなりません。

 もう一つは歯茎から膿を出してしまうような、歯周病の急性発作です。妊娠中でなければ歯の掃除と抗生物質で簡単に症状は落ち着くのですが、妊娠中だと歯の掃除だけでの対処になるので、落ち着くまで少し暇がかかるでしょうがなんとか収まるでしょう。ということで、とくにしておいたほうがいいということはありません。あえて言うなら歯の清掃のことを今一度歯医者で確認されてください。妊娠中はモノグサになりやすいと聞いています。またツワリがあると歯ブラシを口に入れるのも抵抗があると聞きます。口の中が不潔になりやすい条件がそろいやすいらしいので清掃に関してはもう一度再確認されることをお勧めします。
 
 Bの親知らずですが、親知らずというのは20歳ぐらいで生えてくる歯なのでちょうど妊娠とからみやすいようです。妊娠前にご自分の親知らずがどうなっているのかのチェックは"必須"です。特に下の親知らずは90度横に寝て、しかも歯茎の下に埋もれていることがよくあります。こんな歯は時限爆弾のようなものでいつトラブル(顔が腫れたり、口が開かなくなったりします。)をおこすかわかったものじゃありません。時限爆弾を抱えての妊娠というのは考えただけでゾッとします。にもかかわらず、大きなお腹をかかえて来院し、「顔半分腫れて痛い。熱もある。口が開かない。」と訴えてこられるかたは後をたちません。歯医者にしてみれば、レントゲンも撮るのは躊躇われますし、抗生物質も躊躇われます。産科の先生と連絡をとりながらでないと処置に踏み切りにくいものです。このときの歯医者のあわれなこと。そしてやっとの思いで抜歯したとします。これが原因でなく奇形児が産まれたしても、お母さんとしては歯医者のせいにしたくなる人も中にはいらっしゃるでしょう。恨まれた歯医者は哀れです。

 哀れな歯医者は強く訴えます。妊娠前に親知らずのチェックを是非やっておいてください。あって徳をすることはあまりない歯です。そのくせトラブルは山のように考えられます。親知らずを抜いて、顔を張らしたり、痛みがあったなんてことをお友達から聞いてしり込みしている人もいらっしゃるでしょうが、ここは産まれて来る赤ちゃんのために勇気を持ってください。